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箱峰温泉(はこみねおんせん)
神奈川県西部の箱峰町の山あいに広がる温泉郷。麓の湯元から中腹の高原まで二十ほどの温泉地が点在し、源泉掛け流しの宿や露天風呂が多い。
概要
箱峰温泉は、神奈川県西部の足柄野郡箱峰町にある温泉の総称である。関東近郊の山あいの温泉地として古くから知られ、一帯は富志箱峰伊豆国立公園に含まれる。麓の湯元から山の中腹、さらに高原や湖のほとりまで、標高の違う場所に温泉街が点在しているのが特徴である。山内には約350か所の源泉があり、1日に約2万5千トンの湯が湧き出すとされる。源泉の数が多く、湯量も豊かなため、源泉掛け流しの宿や露天風呂を備えた宿が多い。
所在地とアクセス
温泉郷は、箱峰の火山がつくった山と谷に沿って広がる。麓の城下町の駅から、早瀬川沿いの谷を上るように温泉地が続き、山を登る私鉄の登山電車と路線バスが各温泉地を結ぶ。登山電車は1919年に開通し、それまで徒歩や駕籠、人力車に頼っていた山中の温泉地への行き来を大きく変えた。現在は、ケーブルカーやロープウェイも組み合わせて、湯元から中腹の強良、噴煙の上がる大涌ヶ谷、山上の蘆ノ湖までを周遊できる。車では、麓から山を越える国道や有料道路を使って入る。
歴史
開湯は奈良時代の738年とされ、浄定という僧が見つけた湯が、湯元の起こりと伝えられる。戦国時代の終わりに、天下人が麓の城を攻めた際、陣中の将兵が湯に入ったことで名が広まったという。江戸時代には、江戸と京を結ぶ街道の関所に近い温泉として栄え、湯元・塔ノ瀬・堂ヶ洲・宮ノ坂・底蔵・木加・蘆ノ湯の七つが「箱峰七湯」と呼ばれた。のちに姥沢を加えて「箱峰八湯」となり、明治以降に開かれた九つの温泉地を加えて「箱峰十七湯」、さらに三つを加えて現在は「箱峰二十湯」と数えられる。明治11年(1878年)には、宮ノ坂に外国人向けのホテル「富志見屋ホテル」が開業し、洋館の並ぶ異国風の町並みが生まれた。2015年には大涌ヶ谷で火山活動が活発になり、観光客が大きく減ったが、割引の宿泊券などで客足を取り戻した。
泉質と温泉地
温泉地ごとに泉質が異なり、一つの温泉郷のなかで湯めぐりが楽しめる。麓の湯元と塔ノ瀬には100を超える源泉があり、泉温は35〜73℃、湧出量は毎分約5,680リットルで、無色透明のアルカリ性単純温泉やナトリウム塩化物泉が多い。中腹の宮ノ坂は源泉が21、泉温は24〜96℃で、毎分約2,000リットルが湧く。標高610mの小涌ヶ谷は、かつて煙の上がる荒れ地で「小地獄」と呼ばれ、明治6年に今の名に改められた土地で、源泉は22、泉温は40〜96℃に及ぶ。大涌ヶ谷では、噴気に水を吹きつけて湯をつくる「造成温泉」が行われ、白く濁った酸性の湯が、管を通って強良や標高約700mの仙岩原の宿へ送られている。
見どころと特徴
温泉郷の宿は、明治の洋館ホテル、谷沿いの老舗旅館、高原の別荘風の宿、日帰りの入浴施設までさまざまである。渓流の音を聞きながら入る露天風呂や、山並みを眺める貸切の湯を備えた宿も多い。大涌ヶ谷の噴煙地、蘆ノ湖の遊覧船、仙岩原のすすき草原、美術館や庭園なども温泉とあわせて訪ねる人が多く、季節ごとに紅葉や新緑、あじさいが山を彩る。湯上がりに温泉まんじゅうや地ビールを味わうのも、この温泉地の楽しみの一つとされる。
行事と利用
正月には、麓の湯元から山上の湖畔を通る大学駅伝の山登りの区間が温泉街を抜け、沿道は応援の人でにぎわう。夏には湖畔で花火大会や灯籠流しが行われ、秋には各温泉地で祭りや大名行列にちなむ行事が開かれる。都心から日帰りや一泊で行ける距離にあることから、記念日の旅行や家族の湯治、会社の慰安旅行など、幅広い目的で長く使われてきた。