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角の酒屋(かどのさかや)
アパートから歩いて行ける、店先でカップ酒や缶チューハイを買える古い酒屋。港町・小垂市の古い通りの角にあり、買った酒をその場で立って飲む角打ちもできる。
概要
角の酒屋は、北海道の港町、小垂市の古い通りの角にある酒屋である。瓶の酒や缶ビールを売るふつうの酒屋でありながら、店先でカップ酒や缶チューハイを買い、そのまま立って飲む「角打ち」ができることで知られる。店の構えは古く、間口の狭い木造の建物に、色あせた看板と酒の瓶を並べた棚が残っている。近所の住民にとっては、仕事帰りや散歩のついでに歩いて立ち寄れる、暮らしに近い店である。
所在地とアクセス
店は小垂市の中心部、稲保の一角にある。市の玄関口である小垂駅から、坂の多い市街を歩いて10分ほどの距離で、運河や古い石造りの倉庫が並ぶ観光の通りからも遠くない。冬は雪が深く、霧雨の日や風の強い日には、軒先で傘を畳んでから戸を開ける客の姿が見られる。駐車場はなく、徒歩や公共交通で訪れる人が大半である。夏でも朝晩は冷え込む土地柄で、6月でも最高気温が15度前後にとどまる日があり、そうした日は軒先で飲む客の足元に霧雨がかかる。
歴史
店の起こりは明治24年(1891年)にさかのぼる。当初は味噌と醤油をつくる醸造の店で、港に出入りする商人や漁師、近所の家々に品を卸していた。のちに酒類の小売を加え、昭和には町内の酒屋として、一升瓶の量り売りや、盆暮れの贈答の注文を受けて商いを続けた。
店の一角で酒を立ち飲みさせる習慣は、仕事帰りの荷役や職人が、買ったその場で一杯だけ飲んでいったことが始まりだと伝わる。昭和40年代には、港の荷揚げが終わる夕方になると、店先に10人ほどが並ぶこともあったという。平成の終わりごろには、奥の立ち飲みの場が一度閉じられた時期があったが、のちに「立ち飲み酒場」として営業の形を整え直し、現在に至る。
特徴と品ぞろえ
店先の冷蔵ケースには、ワンカップの日本酒、缶チューハイ、缶ビールが並ぶ。地元の北海道の酒蔵の銘柄を中心に、1本200円台の安いカップ酒から少し値の張る純米酒までそろえ、つまみにはあたりめ、チーズ、ソーセージ、缶詰などの乾き物を置いている。会計は店の人が手元の電卓で行い、釣り銭を渡す昔ながらのやり方である。
立ち飲みの場は店先の軒下と、土間の奥に置かれた樽の台などに限られ、椅子はない。一度に飲めるのは多くて7〜8人ほどで、客は買った酒をその場で開け、短い時間で切り上げる。店番は年配の女性が務めることが多く、客が来ても愛想を振りまくことはなく、黙って品を出して奥へ戻る。その無口さが、一人で飲みたい客にはかえって居心地がよいとされる。
地域とのかかわり
近所の住民にとって、角の酒屋は晩酌の酒を買う店であり、仕事帰りに一杯だけ立ち寄る場所でもある。町内会の行事や、夏の港まつりの前後には、まとまった数の酒やジュースの注文が入り、配達も行う。夜は常夜灯のように軒先の明かりがともり、帰り道の目印にもなっている。
利用のしかた
営業は午後から夜にかけてが中心で、定休日は日曜の昼前までなど不定期になることがある。カップ酒を買ってその場で飲む場合、空き容器は店の回収箱に戻すのが決まりである。また、長居や大声での会話は控えるのが暗黙の了解で、混み合う時間帯には手早く飲んで場所を譲る客が多い。観光の客も増えているが、あくまで地元の人の店として、静かに楽しむ使い方が守られている。
周辺
周辺には古い住宅と小さな商店が混在し、坂道を下ると港や運河に出る。近くには昔ながらの総菜屋や銭湯があり、酒屋で買った酒とつまみを手に、帰り道に買い物をして歩く人も少なくない。