生活環境データベース » company
波田建具店(はたたてぐてん)
登波市の中心部、商店街のはずれにあった建具店。1948年に波田栄蔵が創業し、障子・襖・欄間・組子の製作や修理を手がけたが、2019年3月に閉店した。
概要
波田建具店は、登波市の中心部、商店街のはずれにあった建具店である。1948年(昭和23年)に波田栄蔵が創業し、障子・襖・欄間・組子の製作と修理を手がけた。木の戸や窓、間仕切りといった「建具」を、寸法を測るところから納めるところまで店の仕事場で仕上げる、いわゆる町の建具屋で、2019年(平成31年)3月に閉店するまで、およそ70年にわたって営業した。
沿革
創業は戦後まもない1948年で、焼け残った家や建て直される家の戸・障子の注文に応えることから始まった。当初は住宅の障子や板戸、雨戸の製作と取り付けが中心だった。
昭和30年代から40年代にかけて、住宅の新築が増えると、座敷の襖や障子、欄間の注文が増えた。この時期に仕事場を広げ、職人を数人置いて、材木の仕入れから仕上げまでを自前で行うようになった。
その後、アルミサッシや洋室の普及で和室が減ると、注文は新築の建具から、張り替えや修理、古い建具の手直しへ移っていった。平成に入ってからは、組子を使った欄間や飾り障子といった、手間のかかる品を求める客を主に迎えた。最後の数年は注文の数を絞り、2019年3月に店を閉じた。
製作と修理
店で扱った品は、次のとおりである。
- 障子: 杉や桧の桟を組み、和紙を張った障子。桟の細さや組み方を、部屋の明るさに合わせて決めた。
- 襖: 骨組みに下張りを重ねて仕上げる襖。柄物の上張りや、引き手の取り替えにも応じた。
- 欄間: 鴨居の上の採光や通風のための部材。透かし彫りの板欄間と、細い木を組む組子欄間があった。
- 組子: 釘を使わず、溝を切った細い木片を組み合わせて麻の葉や桜、七宝などの幾何学模様をつくる細工。
- 修理: 歪んだ戸の調整、敷居や鴨居のすべりの直し、障子や襖の張り替え、古い建具の補修。
材は地元で手に入る杉や桧を中心に、木を十分に乾かしてから使った。狂いが出にくい材を選ぶことが、建具の長持ちにつながるとされていた。
店と仕事場
店は商店街のはずれにあり、表に建具や見本を並べ、奥と裏手に木工の仕事場があった。仕事場にはかんな、のこぎり、のみ、さしがね、木工機械が備わり、削りくずの香りが通りまで流れた。
寸法の測り方に特徴があった。納める先の敷居と鴨居の間をその場で測り、建具を一枚ずつ現場に合わせてつくる。家ごとに微妙に歪みがあるため、既製品では収まらない部屋にも、一点ものの建具で応じた。
地域とのかかわり
登波市の住宅や寺社、商店の建具を長く請け負い、季節の変わり目や正月前には、障子と襖の張り替えの注文が集中した。商店街に面した店として、通りがかりに戸の立て付けの相談を持ち込む人も多く、小さな修理は気軽に引き受けた。
建具の作り方を見せたり、組子の端材を子どもに分けたりすることもあった。木の組み方に触れられる場として、まちの人に親しまれた。
閉店のあと
2019年3月の閉店で、手作りの木製建具を注文できる店が、市の中心部から一つ減った。住宅の洋風化と後継者の不足は、全国の建具店に共通する事情でもあった。
閉店後も、店が納めた障子や欄間は、市内の古い家や寺で使われ続けている。建具の寸法は家ごとに異なるため、修理には、つくった店の仕事の跡が手がかりとして残っている。