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昼寝堂(ひるねどう)
愛媛県の海沿いの市、八幡磯市の坂の途中にある、古道具を扱う小さな店。台所道具や砥石、竹ひごなどの実用の古物を、手の届く値段で並べている。
概要
昼寝堂は、愛媛県の海沿いの市、八幡磯市にある、古道具を扱う小さな店である。間口は二間ほどで、土間に棚と木箱を置き、奥に帳場がある。骨董と呼ばれるような高価な品ではなく、台所や仕事場、納屋で長く使われてきた実用の道具を中心に扱う。値段は数百円から数千円のものが多く、八百円ほどの砥石や、束ねて売る竹など、日々の暮らしにそのまま使える品が目立つ。
所在地とアクセス
店は八幡磯市の住宅地の一角、港へ下る坂道のなかほどにある。最寄りの駅から歩いて15分ほどで、車は店の前に2台ぶんほど停められる。入口に木の看板と、軒先に竹や古い桶を並べた店先があり、通りからも中の様子が見える。営業は木曜から日曜の昼過ぎから夕方までで、雨の日は戸を半分だけ開けておくことが多い。休みの日や仕入れの日は、店先の黒板に書き出される。
沿革
店は2000年代の初めに、家財の整理を手伝っていた店主が、捨てるには惜しい道具を引き取って並べたことから始まった。はじめは自宅の土間の一部を使った週末だけの店で、2008年に現在の場所へ移って常設の店になった。名前の「昼寝堂」は、客が少ない昼下がりに店主が帳場でうたた寝をしていたことに由来すると言われる。以来、大きく改装することなく、棚を少しずつ足しながら続いている。
取り扱う品
品ぞろえは、およそ次のように分かれる。
- 刃物と砥石:中砥や仕上げ砥の古い砥石、鉋や小刀、鋏。前の持ち主の手の癖で、真ん中がゆるくへこんだ砥石は、使い込まれた味として好まれる。
- 台所道具:銅や真鍮の鍋、せいろ、木の桶、すり鉢、漬物石、竹のざる。
- 竹と木の材料:菜箸や籠づくりに使う竹を、束にして店先で売る。三本で二百円ほどからで、自分で削って箸や串にする人が買っていく。
- 家具と建具:小さな引き出し、卓袱台、古い欄間、ガラス戸。
- 雑貨:古い瓶、秤、ランプ、湯のみ、箱入りの文房具。
仕入れは、近隣の市や島々の家の片づけ、蔵の整理、廃業した店の引き取りが中心で、週に一度は軽トラックで出かける。持ち帰った品は、洗って乾かし、錆を落として値札をつけるまでを店主が一人で行う。直しすぎないことを方針にしており、使えるかどうかを確かめたうえで、手を入れるのは必要なところだけにとどめる。
店の特徴
昼寝堂では、品物の来歴や使い方を店主に聞くことができる。「ただの古い石ですよ」と言いつつ、砥石の粒度や、竹の削り方については、問われれば長く話してくれる。側面に墨で屋号や名前が書かれた道具も多く、読めない字を持ち込んで見てもらう客もいる。雨の日は客足が減るが、濡れた土間のにおいと静けさを目当てに訪れる常連もいる。値切りには応じない代わりに、買った道具の手入れの仕方を、紙に書いて渡している。
地域とのかかわり
八幡磯市は坂と港のまちで、古い家や納屋が多く、道具の入れ替わりも多い。昼寝堂は、家の片づけで出る使える道具の受け皿として、地元の人にも知られている。職人や料理人が刃物の砥石を探しに来るほか、自分で竹を削る人や、納屋で手仕事をする人が材料を買いに通う。春と秋には、近くの八幡の石段を訪れる人が、帰りに立ち寄ることもある。年に一度、店先で不要になった道具を持ち寄る小さな日を設けており、持ち込まれた品は、洗って値をつけ直し、棚に並べられる。
周辺
店の周りは、石垣のある坂道と、低い瓦屋根の家並みが続く。坂を下ると港があり、朝には漁船の水揚げが見られる。近所には小さな食堂や、乾物の店がある。散歩の途中に寄る人が多く、店先で足を止めて竹の束を眺めていく姿がよく見られる。