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鍛冶屋商店(かじやしょうてん)
掛野市のお寺の近くにある、布・糸・針・日用品を扱う昔ながらの小さな店。「鍛冶屋」の屋号とは裏腹に、手芸と暮らしの小物を長く商ってきた。
概要
鍛冶屋商店は、静岡県の掛野市にあるお寺の近くに店を構える、布と日用品の小さな店です。古い木の棚に、反物の端切れ、木綿の布、糸、針、ボタン、布巾、手ぬぐいなどが整然と並び、店先には硝子戸がはまっています。店の広さは数坪ほどで、客が棚の前で手に取って選べる、昔ながらの対面の商いを続けています。
屋号は「鍛冶屋」ですが、金物や刃物の店ではなく、布や裁縫用品を中心に扱っています。屋号は創業の家がかつて鍛冶の仕事に関わっていたことに由来する、と地元では語られています。
所在地とアクセス
店は掛野市の旧市街にあり、山すその寺社に通じる道の途中に位置します。近くには恵昌寺などの寺があり、参拝に向かう人や墓参りの帰りに立ち寄る人の姿が見られます。市の中心部から歩いて行ける距離で、車で来る場合は、近くの路肩や寺の参拝者用の駐車場を借りる客が多いようです。営業は日中が中心で、日曜や祝日は休む日もあります。
歴史
創業は昭和の初めごろと伝えられています。当初は、近在の農家や寺の檀家を相手に、野良着や足袋、さらし、糸などを商う小間物屋でした。戦後は洋裁の普及に合わせて洋服地やミシン糸を増やし、昭和30年代から40年代には、家庭で浴衣や子どもの服を縫う客でにぎわったといいます。
その後、既製服が広がって家庭での裁縫は減りましたが、店は品ぞろえを少しずつ変えながら続いてきました。布巾やタオル、台所の小物、文具の一部などの日用品を加え、衣のものに限らない「暮らしの店」として根づいています。
取り扱い品と特徴
中心は、手縫い用の針と糸です。木綿の生成りの糸や、細い縫い針の袋入りなどは、数百円で買えるものが多く、気軽に手に取れます。針はもともと鍛冶の仕事で作られた道具であり、屋号と品物のつながりを話題にする客もいます。
ほかに、次のような品を扱っています。
- 木綿やさらしなどの生地、手ぬぐい
- 雑巾や布巾に使う布、古い浴衣をほどいて縫うための糸
- ボタン、ゴム、スナップなどの小さな手芸用品
- 半紙、たわし、石けんなどの日用品
店主に尋ねると、布の選び方や針の太さの相談にも応じてくれます。大きな店では見つけにくい、少量の買い物ができることが強みです。
地域とのかかわり
近くの寺では、法要や年中行事の前になると、供え物の半紙や掃除用の雑巾、庫裏で使う布巾の縫い直しのための針と糸を求めて、寺の関係者が足を運びます。このため、店は寺の行事のカレンダーと歩調を合わせるように、にぎわう時期が決まっています。
梅雨どきなど雨の日には、軒先に雨よけの布を掛け、薄暗い店内で静かに客を迎えます。近所の人にとっては、何も買わなくても会釈を交わして通る、まちの風景の一部になっています。
周辺
周辺には寺のほか、住宅と小さな商店が並ぶ落ち着いた町並みが広がります。参拝のあとに、店で糸や針を買い、近くで茶を飲んで帰る、という過ごし方も親しまれています。掛野市は製茶や繊維の産業をもつ土地で、布を扱う店が長く続いてきた背景には、そうした地域の営みがあります。