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黒糸山(くろいとやま)

別名: 黒糸、くろいとざん、黒糸岳

武峰市の近く、武峰市と有多町の境にある標高517mの低山で、地元の人が日帰りで歩く山。切り立った岩峰と大蛇退治の伝説、焼き物の土を生んだ地質で知られ、一帯は県立自然公園に指定されている。

概要

黒糸山(くろいとやま)は、武峰市の近く、武峰市と有多町の境にある標高517mの低山である。文献では「くろいとざん」と音読みされることもある。地元の人が日帰りで歩く身近な山だが、山頂の天童岩や、雄岩・雌岩と呼ばれる二つ並んだ岩峰など、切り立った岩がいくつも並んでいる。低い山とは思えない険しい眺めから、古くから「肥前の名勝の岩山」と呼ばれてきた。一帯は黒糸山県立自然公園に指定され、九州の名山百選にも選ばれている。

所在地とアクセス

山は武峰市の西部と有多町の東部の境にあり、東どなりには標高600mあまりの青貝山が続く。最寄りの駅は民営の鉄道会社の本線の三間野駅で、駅から登山口まで歩いて行くこともできる。車なら、山の南側にある竜ノ門ダムや乳待ノ坊公園の近くに駐車場があり、ここが登山の起点としてよく使われる。主な登山道は、竜ノ門峡から登るコース、乳待ノ坊から見返り峠を通って登るコース、北側の有多ダム方面から登るコースなどがある。山頂まで往復すると、およそ3〜4時間かかる。途中には鎖場やはしご、ロープを使う岩場があるため、低い山でも足ごしらえと手袋の用意が勧められる。

地形と地質

黒糸山は、有多流紋岩類と呼ばれる火山岩でできた岩峰の山である。この岩をつくった火山の活動は、およそ270万〜240万年前とされる。山頂部には、岩石が焼き物の原料となる陶石に変わる「陶石化」の作用が強く見られる窪地があり、かつての火口ではないかと考えられている。ふもとの有多町や伊万野市で磁器づくりが栄えたことと、この土地の地質は深く結びついている。山頂の天童岩は巨大な岩の塊で、その上に立つと、有多の町並みや武峰の盆地、晴れた日には遠くの海まで見渡せる。

歴史と伝説

黒糸山は古くから山岳信仰の山で、鎌倉時代以降は修験者の修行の場として栄え、山中には多くの坊が建てられたと伝わる。「乳待ノ坊」の名も、その坊の名残とされる。山のふもとには黒糸神社の下宮が、山頂近くには上宮が祀られ、地元の人の信仰を集めてきた。黒糸山には、平安時代の終わりごろ、弓の名手として知られる武将がこの山に棲む大蛇を退治したという伝説が残る。大蛇は山を七巻き半もするほど大きかったといわれ、退治に使った弓や、大蛇の骨を納めたという話が、ふもとの寺社に語り継がれている。雄岩・雌岩の岩峰も、この伝説と結びつけて語られることがある。

自然と動植物

山はスギ・ヒノキの植林と、シイやカシ、コナラなどの広葉樹の林に覆われ、秋には落ち葉の積もった尾根道にどんぐりがよく転がっている。岩場の多い独特の環境には、めずらしい植物が育つ。とくにシダの一種のカネコシダは、この山が限られた自生地の一つで、自生地は国の天然記念物に指定されている。ほかにも、岩場に生えるツツジ類や、春のヤマザクラ、秋の紅葉が山を彩る。南側の竜ノ門峡は、清らかな渓流と滝がつづく谷で、湧き水や沢の水が澄んでいることから、国が選んだ水のよい土地の一つにも数えられている。夏は谷で涼む人が多い。

登山と利用

黒糸山は、武峰市や有多町の人びとにとって、休日に気軽に歩ける山である。手前の低い尾根だけを散策して引き返す人も多く、家族連れや年配の人の姿もよく見られる。一方で、天童岩への登りや雄岩・雌岩を望む見返り峠のあたりは岩場が続き、本格的な山歩きの気分も味わえる。登山口の乳待ノ坊公園には、休憩所や展望の場所があり、春の桜と秋の紅葉の時期には、山に登らずに景色を楽しむ人も訪れる。竜ノ門ダムの周りには、キャンプ場や遊歩道も整えられている。

周辺

山の西側の有多町は、有多焼で知られる焼き物の町で、窯元や陶磁器の店が並ぶ。東側の武峰市には、朱塗りの楼門を構える峰の湯温泉があり、山歩きの帰りに温泉へ立ち寄る人も多い。北に足をのばせば、伊万野焼の窯元が集まる伊万野市の山あいの里がある。黒糸山は、焼き物と温泉の土地を結ぶ山として、地元の暮らしと景色に溶け込んでいる。

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