生活環境データベース » company
余白舎(よはくしゃ)
鯖尾市の工房が点在する地区に事務所を構え、眼鏡メーカーのカタログ、パッケージ、ロゴなどのデザインを請けるデザイン事務所の屋号。眼鏡のまちの産業を、紙とかたちの面から支えている。
概要
余白舎は、鯖尾市を拠点に、眼鏡メーカーのカタログ、パッケージ、ロゴなどのデザインを請けるデザイン事務所の屋号である。ロゴデザイン、ブランディング、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、サイン制作、製品開発までを、少人数のチームで一貫して手がける。
鯖尾市は国産の眼鏡フレームの大部分を生産する「眼鏡のまち」で、フレームの加工、メッキ、レンズ、ケースといった工程ごとに小さな工場が分かれて集まっている。余白舎は、そうしたつくり手のすぐそばで、つくられたものの見せ方と伝え方を考える仕事を続けている。屋号の「余白」には、情報を詰め込みすぎず、ものそのものの魅力が伝わる間を残す、という考え方が込められている。
所在地
事務所は鯖尾市の西部、山あいに近い地区にある。この一帯は眼鏡工場のほか、漆器や和紙などの工房も点在する、ものづくりの集まった地域である。市内の眼鏡メーカーや部品の工場へは車で短時間で行ける。打ち合わせは、試作品や工場の現場を見ながら行うことが多い。
事業内容
仕事の中心は、眼鏡メーカーの販促物と製品まわりのデザインである。
- カタログ・ツール: 新作フレームを紹介するカタログ、展示会用の資料、販売店向けの小冊子などの企画から編集、レイアウトまでを担う。撮影の手配や、色や素材の質感を紙の上で再現する印刷の立ち会いも行う。
- パッケージ: 眼鏡ケース、化粧箱、クロスの袋、外箱など。限られた寸法の中で、持ち帰る人の手に渡る瞬間を想定して設計する。
- ロゴ・ブランディング: ブランドの名前や記号の開発、色や書体の決め方、使い方の規則の整理までを一緒に考える。
- サイン・その他: 店頭の看板や展示什器の制作、新しい製品の企画への参加も請ける。
眼鏡に限らず、地域の食品や雑貨、動物園の展示のブランド、祈願に使うろうそくの包装など、市内外の小さなつくり手の仕事も受けている。
主な実績
代表的な仕事の一つに、平成29年(2017年)に制作した、市が「日本で唯一の眼鏡産地」であることを伝えるPRマークがある。眼鏡のかたちを簡潔な線であらわしたマークで、市の名前を添えて、名刺や封筒、パンフレット、産地の催しなどに幅広く使われている。
ほかに、眼鏡のフレームのブランド用ロゴと展示のためのパッケージ、新規に立ち上げた小さなブランドの名前とマークの開発などを手がけてきた。依頼主の多くは、従業員数人から数十人の規模の事業者で、デザインの専任を置けない会社が多い。そのため、余白舎は単に見た目を整えるだけでなく、商品の説明の仕方や売り先の考え方から一緒に整理する関わり方をとる。
仕事の進め方
依頼を受けると、まず工場や工房を訪ねて、つくり方や素材を実際に見る。次に、ブランドが誰に何を伝えたいのかを聞き取り、言葉にしてからデザインに入る。案は紙の模型や実物の試作で確かめ、印刷や加工の現場の職人とも相談しながら仕上げる。完成後も、増刷や新作への対応、ウェブでの販売ページの整備など、継続して相談に乗る。自社のオンラインストアも運営し、制作した製品や雑貨を販売している。
地域とのかかわり
眼鏡産地では、つくり手が自分たちの仕事を外へ伝える力が課題とされてきた。余白舎は、産地のPRマークの制作や、地域の催しへの参加を通じて、その橋渡しをしている。また、デザインを学ぶ学生や若い人を受け入れ、採用活動も行っており、産地の外から来た人が、まちの仕事に関わる入口にもなっている。
県内の他の市や産地の事業者と協働することもあるが、軸足は常に鯖尾市の工房や工場の仕事にある。眼鏡のまちの手仕事の細やかさを、手に取る人に自然に伝えることを、仕事の基本にしている。