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小野稲荷(おのいなり)
香束市の集落のはずれにある小さな稲荷社。2月の初午に稲荷講の人びとが集まって豊作と商売繁盛を願い、秋には地元の人が稲穂や野菜をお供えする。
概要
小野稲荷は、千葉県内の香束市にある農村の集落のはずれにたたずむ、小さな稲荷社である。社殿は一間ほどの小さなもので、鳥居の脇に一対の石の狐が置かれている。社を管理するのは集落の稲荷講の人びとで、神職は常駐しない。田畑の実りと家々の商いを見守る土地の神として、古くから親しまれてきた。秋には地元の人が稲穂や大根などの野菜を持ち寄ってお供えし、一年を通して小さな行事が営まれている。
所在地とアクセス
社は集落の家並みが途切れる田んぼの縁にあり、道から数段の石段を上がった小高い場所に建つ。まわりを竹やぶと数本の古い木が囲み、冬の晴れた日には田の向こうまで見通せる。最寄りの駅から歩くと40分ほどかかり、訪れるのは主に近隣の人である。参道に駐車場はなく、農道のすみに車を寄せて歩いて入る。境内は狭いが、いつも掃き清められている。
歴史
創建の年代ははっきりしないが、江戸時代の後半には、集落の田畑の守り神として祀られていたと伝わる。この地方では、2月の最初の午の日である初午に稲荷の祭りを行う習わしが、海沿いの地域から内陸の山あいまで広く見られた。小野稲荷でも、集落の家々が稲荷講をつくり、初午のたびに当番の家に集まって神を祀ってきた。昭和の半ばまでは、講の宿を持ち回りにして、供え物の準備から後の直会までを家ごとに分担していたという。近年は、この地方の初午行事そのものが徐々に行われなくなってきたが、小野稲荷では形を簡単にして続けられている。
祀られているもの
稲荷の神は、稲の実りを守る神として知られ、豊作とともに商売繁盛、家内安全、開運を願う対象になっている。社殿の中には小さな木の御神体と古い神札が納められ、石の狐は神の使いとして鳥居の前に据えられている。農家の多い集落らしく、田植えの前と収穫のあとにお参りする人が多い。
行事と暮らし
年間の主な行事は次のとおりである。
- 正月:注連縄を取り替え、初詣の人が訪れる。
- 2月の初午:稲荷講の人が集まり、のぼりを立てて、赤飯や油揚げ、お神酒を供える。昔は子どもたちが太鼓をたたいて集落を回ったという。
- 春と夏:田植えや草刈りの時期に合わせて、境内の掃除と草取りを講で行う。
- 秋:新米の収穫のころ、稲穂、大根、さつまいも、柿などがお供えされる。新嘗祭のころには新米を持ってお参りする人も多い。
- 年末:講の人が総出で境内を掃き、新しい注連縄を用意する。
普段は静かな社だが、お供えの季節には、供え物が社の前の台に並び、通りがかりの人が足を止めて手を合わせていく。
周辺と地域とのかかわり
社のまわりには田んぼと畑が広がり、集落の農家は米、野菜、梨などを作っている。市内には同じような稲荷社が各地にあり、それぞれの地区で初午の日に祭りが営まれてきた。小野稲荷は、そうした社のなかでも小規模だが、集落の人にとっては顔を合わせる場でもある。お参りのついでに立ち話をする人や、散歩の途中に立ち寄る人もいて、田園の暮らしに溶け込んだ小さな信仰の場になっている。維持にかかる費用は、講の会費と、お賽銭、集落の人の寄付でまかなわれている。
関連
同じ県内で田んぼと畑の広がる農村をもつ市として、香束市がある。