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谷辺市(たなべし)
和歌山県の中南部にある、海と山の両方に近い市。面積は約1,027平方キロメートルと県内で最も広く、海沿いの市街地から山の奥の温泉地までを一つの市が抱える。梅の産地であり、山の参詣道の入り口としても知られる。
概要
谷辺市は、和歌山県の中南部にある市である。南に海、北と東に深い山を控え、海と山の両方に近いことが、このまちの暮らしと産業の土台になっている。人口は約6万3千人、面積は約1,027平方キロメートルで、県内では最も広い市域をもつ。人口では県都の和賀山市に及ばないが、近畿地方でも市域が1,000平方キロメートルを超える市は数えるほどしかない。
市街地は海に近い平地に開け、その背後に山あいの集落が奥へと続く。古くから山の参詣道へ向かう人びとの分岐点にあたり、「山の入り口のまち」とも呼ばれてきた。
地理と市域
市域は、海沿いの市街地、川に沿って山へ入る谷あい、標高の高い山間部の三つに大きく分けられる。海側には漁港と温泉地区が並び、山側には梅やみかんの畑が段々に広がる。山間部は森林が市域の大半を占め、川の上流には温泉や渓谷、小さな集落が点在している。海岸から山の奥までは車で1時間以上かかる所もあり、同じ市のなかでも気候や暮らしぶりが大きく異なる。
隣の白浦町とは海沿いでつながり、温泉と海水浴で知られる観光地と日常の往来がある。海沿いの温泉地区には、1968年創業のホテル汐路苑のような宿が立ち、観光や保養の客を迎えている。
歴史
谷辺の名は、古くは城下の町として栄えた旧市街に由来する。江戸時代には城を中心とした町人のまちが海辺に形づくられ、港を通じた物資の集散と、山の参詣へ向かう旅人の宿場として発展した。
近代に入ると、1942年5月20日に旧谷辺市が発足した。その後、平成17年(2005年)5月1日に、山あいの4つの村や町と新設合併をして、現在の広い市域を持つ谷辺市となった。この合併により、海岸から山の奥の温泉地までを一つの市が抱えることになり、行政では広い市域を結ぶ道路や支所の運営が大きな課題になった。合併した地区には、それぞれ支所が置かれ、窓口や相談の機能を受け持っている。
産業
農業では、梅が最も知られた作物である。山すその斜面に梅畑が広がり、春先には花が山肌を白く染め、初夏には収穫と加工の作業でまちが忙しくなる。梅干しや梅酒などの加工品も盛んで、農協の谷辺みどり農協が集荷と販売を担っている。このほか、みかんなどの柑橘も育てられている。
漁業は海沿いの漁港が拠点で、地魚の水揚げと干物などの加工が営まれている。山間部では林業が受け継がれ、木材の産地としての顔もあわせもつ。観光は、温泉、山の参詣道を歩く旅、海辺の景色が柱で、国内外から訪れる人も多い。
医療と暮らし
市内の医療の中心となるのがtanibe-sogo-byoinで、広い市域の住民の診療を支えている。山間部では診療所や巡回の医療も大切な役割をもち、市街地への通院や買い物のための道路網の整備が続けられている。海沿いの市街地には駅と商店街、学校や公共施設が集まり、山あいの集落とは路線バスや市のコミュニティバスで結ばれている。
行事と文化
山の参詣道は、世界に知られた歴史の道として整備され、道沿いの古い社寺や休み処が受け継がれている。市街地の神社では、秋に例祭が行われ、海辺の町人のまちの伝統を伝える。春の梅の花の季節には、梅林を訪ねる人びとでにぎわい、初夏には梅の収穫を祝う催しも開かれる。
周辺とアクセス
海沿いの市街地は、民営の鉄道会社の本線の駅を中心に開け、県都の和賀山市や隣の白浦町と鉄道と道路で結ばれている。山間部へは、川に沿った国道と県道が通じ、参詣道の入り口や温泉地へ向かう路線バスが出ている。海と山、温泉と畑を一日のうちに巡れることが、このまちの魅力として語られている。