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雪渡酒造(ゆきわたりしゅぞう)
三重県桑野市にある江戸後期創業の造り酒屋。毎年の蔵開きと、米の甘みと酸のバランスがよい純米酒が評判で、国の登録有形文化財の店舗兼主屋でも知られる。
概要
雪渡酒造は、三重県の桑野市にある造り酒屋です。純米酒を中心に仕込み、米の甘みにあとから少し酸が重なる味わいで、地元の人や遠方の日本酒好きから評判を集めています。毎年秋に蔵を開放する「蔵開き」を行い、搾りたての酒を小さな紙コップで試飲できることから、はじめて日本酒を口にする人の入口にもなっています。
軒先に吊るした杉玉は蔵のしるしで、新酒ができたころは青々としていますが、季節がめぐるにつれて茶色く枯れていきます。蔵を訪れる人は、その色の変化を酒の時間として眺めます。
沿革
蔵の母体は、江戸時代の初め(1636年)に今浜から移り住んだ一族が、この地で営んだ材木商にあります。材木商として町に根づいたのち、文政元年(1818年)に当主が、すでにあった造り酒屋を引き継いで酒造りを始めました。街道沿いの町で、材木と酒の二つの商いをつないできた歴史が屋号に残っています。
21世紀に入り、六代目が2004年に杜氏となりました。六代目は大学で工学を学び、食品会社に勤めたのち、国の酒類の研究機関で醸造を学び、各地の杜氏のもとで修行を重ねた人です。2005年には自ら手がける酒の銘柄を「今燈」と定め、それまでの蔵の酒を一新しました。
酒造りと商品
酒造りは小さな仕込みを重ねる手法が中心で、純米酒、純米吟醸酒を主力にしています。主な原料は山田錦、愛山などの酒造好適米で、品種ごとの味の違いを楽しめるよう、種類を分けて仕込みます。主力の銘柄「今燈」は、全国新酒鑑評会で複数回の金賞を受けています(平成20・23・25・28年度、令和2・4・5・7年度)。
味わいは、冷やでは軽やかで口当たりがやさしく、ぬる燗にすると米の甘みがふくらみ、喉の奥にしみるという声が多くあります。同じ純米酒でも仕込みごとに香りの立ち方や辛さ、後味の切れが違い、並べて飲み比べる楽しみ方も広まっています。
海外への展開
早くから海外にも目を向け、2004年に香港とカナダ、2005年にシンガポール、2015年にフランスへと販路を広げてきました。地元の小さな蔵でありながら、各国の飲食店で日本酒の入門酒として扱われています。
建物と所在地
桑野市の旧市街、街道に面した通りに店舗兼主屋があります。主屋は明治22年(1889年)の建築で、大正2年(1913年)に増築され、昭和63年(1988年)に改修されました。平成25年(2013年)に国の登録有形文化財に登録され、歴史ある木造の町家と蔵の姿を今に伝えています。
蔵の中は冷んやりとして、麹室の甘い匂いが漂います。町の中心部から歩ける距離にあり、蔵開きの日には、近隣だけでなく県外からも多くの人が訪れます。
蔵開きと地域とのかかわり
蔵開きは秋に行われ、蔵人が搾りたての酒について説明しながら、試飲を振る舞います。杉玉や仕込みの道具、蔵の中の見学のほか、四合瓶を求める人も多く、毎年にぎわいます。
近年は、酒蔵の需要の高まりにあわせて、町内に新しい蔵を整える計画が進められ、2026年1月から稼働を始める予定です。旧来の主屋と蔵を守りつつ、酒造りの規模と品質を高める取り組みとして、地域の期待を集めています。
酒屋として、また材木商の流れをくむ家として、町の歴史とともに歩んできた存在です。