生活環境データベース » company
田島建具店(たじまたてぐてん)
掛森市にあった建具店で、障子・ふすま・木製の戸・欄間などの製作と修理を手がけ、1982年に開業して2014年に閉業した。組子の障子と、住まいに合わせた寸法仕事で、32年のあいだ市内の家々を支えた。
概要
田島建具店は、静岡県西部の掛森市にあった建具店である。障子・ふすま・木製の戸・欄間などを、注文に合わせて作り、傷んだものは直して使い続けられるようにした。1982年に開業し、2014年に閉業した。従業員は店主を含めて2〜3人ほどの小さな店で、住宅の建具を中心に、寺や集会所、商店の戸も請け負った。
沿革
店は1982年、市内の住宅地に近い通り沿いに、作業場を兼ねた店舗として開かれた。当時の掛森市では、新しい住宅が増える一方で、木の建具は少しずつアルミサッシや量産のドアに置き換わり始めていた。そうしたなかで、開業から1990年代までは、座敷の改築や新築に合わせた障子・ふすまの注文が安定して続いた。
2000年代に入ると、和室を持たない住宅が増え、張り替えや修理の仕事が中心になった。2010年代には、既製品との価格差や職人の高齢化もあって注文が減り、2014年に32年の営業を終えた。閉業の際には、預かっていた建具を持ち主に返し、道具の一部は同業者に引き継がれたという。
事業と特徴
主な仕事は次のとおりである。
- 障子:細い桟を組んで作る組子の障子。紙の張り替えも行い、年末には張り替えの依頼が重なった。
- ふすま:骨組みから作る新調と、紙や布の張り替え。
- 木製の戸:玄関の引き戸、板戸、書院の窓、押入れの戸など、枠の寸法に合わせて作る。
- 欄間:透かし彫りや組子模様を入れた装飾の欄間の製作と修理。
建具は家ごとに敷居や鴨居の寸法がわずかに違うため、現場で採寸し、削って合わせる「寸法仕事」を大切にした。材には杉や桧のほか、飾りの部分に堅い木を使い分け、反りや狂いが出にくいよう、乾燥させた木を使った。静岡県の建具は、古くは神社の造営に集まった宮大工や指物師の技にさかのぼるとされ、明治の終わりごろに同業組合が作られたほど、産地として厚みのある仕事である。この店も、その流れの上にある地域の職人仕事として営まれた。
店舗と作業場
店は、間口の狭い店先と、奥の作業場からなっていた。店先には障子やふすまの見本が立てかけられ、奥には、材を切る機械、かんなや鑿などの手道具、組子を組む作業台が並んだ。仕事は、採寸、木取り、組み立て、仕上げ、取り付けの順に進み、出来上がった建具は店主がトラックで運び、その場で建て付けを確かめた。
地域とのかかわり
掛森市は茶の産地として知られ、広い座敷をもつ農家や茶商の家が多かったため、障子やふすまの注文には事欠かなかった。お盆や正月、法事の前には、座敷の障子の張り替えを頼む家が増え、近所の家には、できたての建具を一枚ずつ届けて回った。隣の藤坂市や掛野市の寺や旅館からの依頼もあり、掛森市の暮らしの中で、住まいの手入れを支える店として知られていた。
閉業のあと
閉業後、店舗と作業場は取り壊されず、倉庫などとして使われた。かつて納めた障子や欄間は、今も市内の古い家で使い続けられている例がある。張り替えの方法や、組子の寸法の取り方は、市内に残る建具職人のあいだで語り継がれている。